新たに発見された東松照明の幻の写真集『東松照明写真集2 家・吹きだまり・アスファルト・恐山......他』


1966年、写真家・東松照明(1930-2012)は個人としては初めてとなる写真集『東松照明写真集1 <11時02分>NAGASAKI』を写真同人社から出版した。
当時の刊行予告チラシによれば全4巻で、それぞれタイトルは『<11時02分>NAGASAKI』、『恐山 地方政治家 家.....他』、『占領』、『城 コレクション 代用品......他』として刊行される予定だった。ところが第1巻の『<11時02分NAGASAKI』の売れ行きが思わしくなく、出版直後に写真同人社が倒産したためその後の三冊は未完となった。倒産後、東松は売れ残りの『<11時02分NAGASAKI』を回収し、自身の出版社「写研」を立ち上げ、ここから『(写研版)<11時02分NAGASAKI』、『日本』、『サラーム・アレイコム』、『おお!新宿』とほぼ一年に一冊のペースで自らの著書を出版した。




     (左)当時の刊行予告チラシ (右)写真同人社版の『東松照明写真集1 <11時02分>NAGASAKI』と『東松照明写真集2 家・吹きだまり・アスファルト・恐山......他』





今回新たに発見された『東松照明写真集2 家・吹きだまり・アスファルト・恐山......他』は、上記の事情から考えて第2巻のためのサンプル(現物見本)という見方が現実的だが、すでに写真の構成、紙の選定、造本に至るまで相当な段階まで作業が進んでいたことをこの本が証明している。おそらく写真同人社が倒産を免れていたとしたら、本書が量産され世に出版されていたとしてもおかしくはない。内容は写研から刊行された『日本』とほぼ同じであるため、東松は写真同人社から出版することができなかった本書の構想を写研に引き継ぎ、構成やレイアウトを多少変え、タイトルを『日本』と改め出版したのだろう。
 


さてこの二冊の写真集『東松照明写真集2』と『日本』、内容を見比べてみた結果大きく違う点は以下となる。
 


 
 
1- 収録作品の各シリーズの内『日本』にだけ「占領」が含まれる。
(左)『東松照明写真集2』所収のシリーズは吹きだまり→恐山→アスファルト→風景→せともののまち→おりもののまち→ghost town→家→チンドンであるのに対して、(右)『日本』所収のシリーズは吹きだまり→恐山→アスファルト→風景→せともののまち→おりもののまち→ghost town→チンドン→家→占領となる。


 


 
2- テキストページにおける地色と文字色の違う箇所がある。(白地に黒文字が黒地に白文字に変更)
(左)『東松照明写真集2』では地の紙色に黒インキの文字に対し、(右)『日本』では地を黒インキでベタ刷りに文字を白抜きしている。
 




3- 写真の並びを入れ替えた箇所が存在する。
(左)『東松照明写真集2』 (右)『日本』
 


 




4- 『日本』にしか含まれない写真が存在する。
(右)『日本』にしか含まれない写真はこの長靴の写真1点+「占領」のシリーズ。







 
5- 『東松照明写真集2』の中にしか含まれない作品が11点存在する。つまり未発表作品。




東松が『日本』を出版する過程でなぜこれらの11点を除外したのかは知る由もない。気分が変わったのか、それとも何か別の意図があったのか、それすらも分からない。ただ今まで現存しないとされてきた幻の写真集が発見されたことは、写真家・東松照明の表現としての評価、出版物としての評価を含めたより一層の調査・研究が進む重要な資料であることに変わりはない。なんにせよ今のところ世界で一冊しか存在しないのだから。







 
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